D. quinqueloba Thunb. (カエデドコロ)
カエデドコロは近畿地方よりも南、奄美の喜界島まで分布し、向陽の地に旺盛に繁茂している。地下部は他の種のものに比べて格段に硬く頑丈である。左と中央の写真はオレンジ色のオス花の盛りの時期 (鹿児島県姶良郡、2001年8月26日)。節間が短く多くの葉を付け、巻きつき高さも高く、他の植物を高密度に被覆するため、被覆された植物は光を遮られて枯れることが多い。右の 写真は、被覆していたカエデドコロを除去した後の杉の木 (鹿児島県鹿屋市、1987年11月20日)。 関東から東北地方ではオニドコロやマメ科のクズがこのように被覆する地位にあるが、西日本ではそれらよりもカエデドコロが勢い良く被覆している。南九州の森林に生えているツル植物の中で、カエデドコロは 葉の窒素やカリウムなどの含量が他の種に比べて格段に多いことが(野上 (1996), 林地のつる植物の養分含有率 (I) -南九州地方におけるいくつかのつる植物の夏季の葉部の養分含有率-  日本林学会論文集, 107: 137-140)、カエデドコロの旺盛な繁茂に関連している可能性が考えられる。
 
 

 

写真左はメス花序(左)とオス花序(右)。メス花序は他種と同様に下垂する。 オス花序も、多くの他種とは異なり、ヒメドコロとは同じく、下垂する。子房の長さは、開花直後は3mmほどだが反転して上を向く頃には5mmほどになる。

 

 

写真右はメス花。メス花の6枚の花被は、他種と同様に内側と外側の3枚ずつに分けられる。雌蕊は伸び先端に柱頭をつける。花被の付け根に、先端が灰色の退化雄蕊が同格に6本見える。

 

こちらはオス花。6枚の花被は3枚ずつに区別できる。雄蕊は同格の6本があり、先端部が二つに分かれて灰色の葯を付ける。雄蕊の先端部は中側に曲がり、葯は花の中央に集まる。雄蕊の先端部の曲がっている部分はやがてチョコレート色になる。中央には退化雌蕊があるが、真上から見ているこの写真では分らない。 右の写真では、中央の退化雌蕊は3本が合着していることが分る。この花ではまだ雄蕊の曲がりが少なく、且つまだチョコレート色にもなっていない。

メス花にもオス花にも、牛や豚の飼育小屋のような特有な臭いが明確にある。特にオス花は最上段の写真にあるように大量に付くため、少し離れていても匂いは明確に感じる。

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