D. izuensis Akahori (イズドコロ)

左メス株、右オス株 (下田市須崎、2002年8月4日)。イズドコロは伊豆半島の東岸に固有な種である。この分布地の南限近くの須崎御用邸内に多数生育しているイズドコロについて、昭和天皇による詳細な観察報告があり (生物学御研究所、伊豆須崎の植物、保育社 (1980))、イズドコロが生育している地点は温暖な伊豆半島の中でも特に冬季の温度が高い地域であるという指摘が述べられている。

イズドコロの分布地域には、ヤマノイモ属の他のメンバーのヤマノイモ、オニドコロ、ヒメドコロも生育しており、それらと同様に撹乱を受けた地に侵入していることが多い。耐陰性の程度はヒメドコロと同じ程度であり、林縁から林内に少し入った地点にも生育している。また、イズドコロは巻き付き高さが他のメンバーに比べると低い傾向がある。同所的に生育している他のメンバーに比し種子の休眠期間は長く、地下器官の休眠期間は短く、これらの期間の長さをこの属の分布の南北性と休眠期間の長さの関係(Bot. Mag. Tokyo 99:15-27) に照らすと、だいぶ温暖な地の種の休眠性に相当する (植研雑 69:402-407(1994))。なお、吸水した種子は他のメンバーと同様にマイナス5度程度まで耐えるが、地下器官は0度には耐えられない。種子が発芽した年に花をつけて種子を形成することが出来れば一年生草本として成り立って、より寒冷な地に進出できるのであろうが、種子の形成に至るまで3年はかかるため、分布域を広げられないものと思われる。イズドコロの葉は枯れると黒くなり、他種と見分けが付く。

 
メス花。6枚の花被は内外の3枚ずつに区別できることは他種と同じである。 退化雄蕊は6本あるが同格ではない。外側の3枚の花被の付け根から出ている3本が早く伸び (左の写真では4時と8時の位置にある2本の先端が褐色になっているが、葯や花粉が出来ているようには見えない。もう一本は12時の位置にある が雌蕊の陰になっている。)、柱頭の先に近い位置にある。内側の3枚の花被の付け根から出ている3本は伸びが遅く、左の写真では先端が白い。子房の長さは、花が咲いた時には 5mm ほど (右の写真)。
 

オス花。外側の3枚の花被の付け根から出ている3本の雄蕊が発達し、先端が二つに分かれて葯を付ける。それらの雄蕊のあいだに、内側の3枚の花被の付け根から生じるもののほとんど発達しない雄蕊が3本ある (この写真では見えない)。

匂いはないと思う。

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