D. tokoro Makino (オニドコロ)
日本のヤマノイモ属の野生種の中では、市街地や里山を中心にしてどこにでも旺盛に繁茂していて、最も良く見かける種である。

ヤマノイモ属のたいていの種は、種子から育てると開花し結実するまで、3~5年かかる多年生草本である。このオニドコロは、日本産の野生種の中で唯一、 種子から発芽したその年に花を咲かせ結実し、一年生草本としても生育することが出来る。オニドコロほどその傾向が強くはないが、ウチワドコロも一年生草本として育つことがある。

左は、アカマツの幼木の上をすっかり覆っているオニドコロ。 東北地方では例年5月始めに地上にツルが出て伸びだす。はじめは葉を展開せず、他の植物を囲繞しながらツルをある程度まで伸ばしたあとに、葉を展開する。その結果、また葉柄も長いため、既に葉を茂らせた他の植物を覆うことになる。発芽し地上に出たばかりのツルに花芽はついてはいないようであり、花序は7月上旬頃から見え出す。メス花序は下垂し、柄のように見えるのは子房。メス花序は分岐することはまずない。仙台市青葉区、2001年7月28日。

右。 オニドコロに限らず、ヤマノイモ属の植物は、この写真のようにツルでもって林縁をふさぐように(マント群落)成長することが多い。 オス花序は斜上する。大きな花序では、この写真のもののように分岐することもある(この花序は成長途中である)。越後湯沢、2001年7月13日。

 

左はメス花序。 子房が柄のように見える。バックは1mm 方眼。下垂する花序についているメス花は、他の多くの種と同じように花後に反転して上(花序の基部)方向を向く。右はオス花序。 オス花序は斜上し、オス花には、2mm ほどの柄がある。反転はしない。

 

左はメス花。花被の幅は狭い。開花後時間を経たために、この花では柱頭と4枚の花被が褐色になっている。6枚の花被は、わずかな形のちがいだが、3枚ずつに分けられる。白く短い退化雄蕊が6本同格に明瞭に見えることが、ヒメドコロとの大きな違いである。

右はオス花。花被の幅はメス花とは異なる。6枚の花被は3枚ずつ形が少し異なる。同格の雄蕊6本は、下部は花の中央に向かって曲がって集まり、上部は外側に向かって曲がり (いわゆるイナバウアーのように)、葯はお互いに離れて配置される。また、この写真よりももう少し時が経つと外側に向かって曲がる雄蕊の上部も褐色になるため、花の中央部が広く褐色に見える。似ているヒメドコロのオス花は、雄蕊の上半部が外側に曲がらず葯が中央に集中するため、オニドコロと区別できる。メス花もオス花も、さしわたしは 4~5mm。仙台市青葉区、2004年7月22日。

花に匂いはないと思う。

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