D. sititoana Honda et Jotani (シマウチワドコロ)
伊豆七島に固有。キクバドコロによく似ている。和名ではシマウチワドコロとなっているが、学名としてはキクバドコロの変種の立場で命名された D. septemloba Thunb. var. sititoana (Honda et Jotani) Ohwi が用いられることもある。キクバドコロと外見上で違う点は葉に少し照りがあることぐらいであろう。写真は開花中の株で、左がメス株、右がオス株。伊豆大島、2005年6月25日。

新天地にいち早く進出する性質が強いらしく、サルトリイバラなどとともに、 噴火後あまり年月を経ていない外輪山の内側にたくさん生育している。潅木林 の内部にも少し入っていて、耐陰性はキクバドコロと同じ程度と思える。花期も同じであり、6月初旬から咲き出す。種子の休眠期間が長いこともキクバドコロに似ている。なお、キクバドコロは伊豆七島には生育していない。

外見上キクバドコロとシマウチワドコロを区別することは困難であるが、染色体数と、胚嚢形成の形式に、両種の間で違いがあることが武内により明らかにされている。ヒメドコロやタチドコロにおける染色体数の多型は倍数体の関係にあると考えられる。しかし、キクバドコロは2n=20でありシマウチワドコロは 2n=40 であるものの、葉の気孔の大きさや花粉の様相からは、この両者は単なる倍数体の関係にあるとは考え難い。さらにまた、日本産のヤマノイモ属の大多数は胚嚢形成の型式がタデ型であることに対して、キクバドコロとイズドコロはDrusa型であるのに(Drusa型のこの2例はこの属としては初の観察例)、シマウチワドコロは大多数の種と同じくタデ型であった。これらのことから、 シマウチワドコロはキクバドコロの変種というよりは別系統の種と考えるのが妥当であろうとされ (Takeuchi et al (1970): Chromosome numbers of some Japanese Dioscorea species. Acta Phytotax. Geobot. 24: 168-173: Takeuchi (1998): "On the chromosome numbers and embryo sac formation of some Japanese Dioscorea species" In  Araki & Okagami [eds], Dioscorea Research 1, 37-41.  など)、頭書の学名はこれに依ったものでる。

 
左メス花。6個の同格の退化雄蕊の基部に色が着いていない点を除くと、キクバドコロとほぼ同じである。なお、6本の退化雄蕊の先端部は上の写真のように白い。開花後だいぶ時を経ると、この先端部は茶褐色になるが、基部周辺に色は付かない。

右オス花。キクバドコロとほとんど同じである。

 

メス花(左)とオス花(右) の色は少し異なっている。

花に匂いはないと思う。

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