D. nipponica Makino (ウチワドコロ)
この写真には、自然状態で同所的に生育している3種のヤマノイモ属の葉が写っている。画面左約 1/3 の下半分に写っているハート型の全縁の葉(切れ込みがない葉)はオニドコロ。画面中央の黄色い定規の左上の、先が尖った裂片をもつ葉がキクバドコロ。定規の右側のあまり先が尖っていない裂片をもつ葉がウチワドコロ。ウチワドコロの葉の色は、暗緑色のキクバドコロに比べると緑色が淡い。黄色い定規の長さは約12cm。新潟県越後湯沢七谷切、2002年6月22日。

 

左の写真はメス花の花序と葉。メス花序は自然状態でもこの写真のように下垂する。子房(下位子房)が花の柄のように見える。未熟なメス花は下(花序の先端の方向)を向いているが、開花する頃には花序に対してほぼ直角になる。開花後しばらくするとメス花は上 (花序の基部方向) を向き出し、カプセルになる頃には真上を向き、カプセルが成熟して口が開いても、強い風が当たらないと種子はカプセルから出ることはない。このような雌花の向きの反転は、ヤマノイモ属の多くの種に見られる。日本産の野生種でも、ヤマノイモとソメモノイモ (2種とも Enantiophyllum 節)以外の種に見られる。仙台市青葉区、7月14日。

右の写真はオス花の花序。オス花の花序は斜め上を向いて伸び、葉の重なりの叢の外に出る。オス花は短い柄を持つ。向きが反転することはない。バックは1mm方眼。ツクシタチドコロ、タチドコロ、キクバドコロ、などの種では、春先に地下器官から地上に出たツルに既に花序が見えるが、ウチワドコロの花序は、双方の花序とも、発芽後2ヶ月ほど経た7月初旬頃から肉眼で見え出す。双方の花序とも、あまり下位の節には生じない。

 

左がウチワドコロのメス花。花被が全開しても、花被の先端から反対側の花被の先端まで 3mm ほどの小さな花。花被は6枚だが、微妙な違いで外側の3枚と内側の3枚に分けられる。外側の3枚の先端は丸みをおび、内側の3枚の先端は丸みが少ないが、違いはわずかである。退化雄蕊は6本で、外側の花被の付け根にあるものと内側の花被の付け根にあるものとでは、わずかながら前者の成長が早い。先端は二つに分かれるが、葯が成熟することはない。3本が合体した花柱は退化雄蕊よりも高く伸び、開花時に横から見ると、柱頭がわずかに花被の外に出る。 仙台市青葉区、8月上旬。

右はオス花。 6枚の花被は、メス花と同じく、わずかながら3枚ずつの差がある。6本の雄蕊もほぼ同格であるが、3本ずつわずかに差がある個体もある。先端は中央に向いて曲るが、退化雌蕊を隠すほどまでにはならない。退化雌蕊は、明瞭に中央に見え、他の種のものよりも大きい。7月下旬。

花に匂いを感じたことはない。

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