D. asclepiadea Prain et Burkill (ツクシタチドコロ)
ツクシタチドコロは九州南部と奄美に分布している。タチドコロに似て葉の縁に細かな出入りがあり波を打っている。日本のヤマノイモ属の中ではもっとも早く花が咲く。地下器官から春先に地上に伸びだしたshootには、既に花芽が着いているのが見える。左はオス株で、花序を伸ばし終わり雄花が咲きだした頃 (4月30日)。タチドコロと同じように下位の葉は輪生し、右の写真では4枚輪生している。タチドコロと違い、向陽地を好み、つる性の程度が高い。
 
メス花序は下垂する (左の写真)。メス花序は上位の節から出る。メス花は花後反転することは多くの他種と同じである。子房の長さも他の種と同じく5mm前後である。右がメス花。花被が3枚ずつ区別でき、三つの柱頭は外側の花被の方向を向いている。退化雄蕊は3本しかなく、外側の花被の基部から出、先端は白いままでいる。 退化雄蕊が半数であるため、日本のヤマノイモ属の花の中ではもっともシンプルな構造の花に見える。
 

オス株。オス花序は下位の節からもたくさん出る (左の写真)。これは第三紀遺存種と同じ性質である。送粉にはアリが関与しているのであろう。オス花もシンプルであり、雄蕊は3本しかない (右の写真)。オス花には1mm 程度の短い柄があることも同定のためのkeyである。

ツクシタチドコロはStenophora節に属しており、この節の第三紀遺存種は5種とも、オス花の雄蕊もメス花の退化雄蕊も同格の6本である。また、ツクシタチドコロ以外の日本産の種もメスオスとも6本である(タチドコロのように、3本の発達が遅い種もあるが、それでも本数は6本である)。輪生葉という第三紀遺存種と同じ形質をもちながら、花の構造では遺存種と最も遠い形質をもっているわけである。

花は、一瞬ジャスミンのような匂いがした気がする。

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